
10時半に順天堂医院への転院が決まり、すぐに妹が手伝いに来てくれた。荷物をまとめ、タクシーで移動する。今までトイレに行く時でさえ、心臓モニターや酸素の値をはかる装置を外してくれなかったのに、見送りはあっけないものだった。
タクシーの中で、問い合わせの多い旅館に電話をかけ、しばらく自分が対応できない旨を伝える。まったく心の準備ができていない私は、涙で何度も言葉を詰まらせた。
順天堂は日赤と違って昭和な雰囲気。入院手続きをする棟を間違え、たらい回しにされる。気分が悪く、診察券を受け取らずに指定されたフロアに行ってみると、そこはICUだった。ドキドキしながら誘導されたベッドに向かうと、夥しい数の医療機器。ここ?! まだ残っている仕事をしたいと思っていたし、自分が冒されている病がどれほど重症なのかと、看護師に何度も不安を訴えた。
一通りの検査が終わり、若い先生が入ってきて私の様子を聞き、週末中に手術になるかもしれない、と言う。全くもって付いていけない。
夕方、信と母が合流し、執刀医の梶本先生の話を聞く。自信に満ちた声で、分かりやすく説明をする先生に幾分かの安心感を覚えた。翌朝9時から腫瘍の摘出手術となった。このスピード感、やはり心臓外科のプロたちなのだ。任せるしかない。

Ayaka Morohoshi諸星 文香
1980年10月14日東京都生まれ。フリーランス。カナダの大学を卒業後、不動産開発会社や旅行会社の勤務を経て、2011年より世界の素敵なホテルを厳選した宿泊予約サイト「Tablet Hotels」に従事。現在は都内でパートナーと2人暮らし。
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