
またも眠れぬ一夜を過ごした。一体いつからそんなに大きい腫瘍があったのか。先週末はジムにも行った。7月の苗場山は確かに体力が落ちたと感じたが、2月は雪の谷川岳にも登った。頭痛がはじまったのは、今からたったの1ヶ月前だ。現実が全く受け入れられない。
朝から大量の血液検査、造影剤を使ったMRI。母に自宅へ寄って、テーブルの上のメモを持って来て、とお願いする。再入院なんて想定外。仕事も片付けもすべて残して来てしまった。
午後、母が到着し、先生から話を聞く。院内の複数の先生に相談したところ、心臓の腫瘍は胸骨と心臓の間ではなく、右心房に張り付いており、悪性の可能性が高く、肺にも転移のような影が見られるという。肺がん。37歳。昔、仕事でご一緒したキャシー中島さんの長女を思い出してしまう。若い人の癌の進行は、恐ろしく早い。誰もが知る常識だ。
母はすでに国立がんセンターに電話をかけている。心臓外科の先生とも話す機会が得られた。彼は日赤でのキャリアの中で、心臓腫瘍の摘出手術は1回しか立ち会ったことがなく、しかもすべて取り切ることはできなかったそうだ。頼りない。そして、順天堂医院への転院を奨められた。心臓バイパス手術の名医、天野篤先生を紹介してくれるという。ほんの少しだけ希望が見えた気がした。
面会時間を過ぎて、出張から戻った信が駆けつけて来た。今日は一日中泣いていたが、信の顔を見るとまた涙が止まらなくなった。

Ayaka Morohoshi諸星 文香
1980年10月14日東京都生まれ。フリーランス。カナダの大学を卒業後、不動産開発会社や旅行会社の勤務を経て、2011年より世界の素敵なホテルを厳選した宿泊予約サイト「Tablet Hotels」に従事。現在は都内でパートナーと2人暮らし。
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