
午前7時過ぎに運命の血液検査がはじまった。例によって2回失敗ののち、腕を温めて3回目で成功。8時になるとはるちゃんが昨日の残りのおかゆを温めてくれたが食欲はない。10時前に信と母もやって来て、みんなで朝食タイムをしている。モルヒネの影響だろう、私は10分おきくらいに寝落ちしている。
予定通り午前11時に小島先生と緩和ケアの石木先生が来て、新人の先生や看護師も入室し、病室はいっぱいになった。結果はやはり昨日の見解と同じく、今の私の病状では副作用のリスクが高く、抗がん剤治療は行えないとのことだった。事実上の治療放棄。次の治療で使う抗がん剤について説明を受けたのは、たった1週間前なのに。どれだけの速さで病気は進行しているのだろう。
今回の決定には、貧血や白血球の数だけでなく、肝機能や腎機能の低下が問題視されたらしい。確かにむくみは日に日に増しており、ほとんど食べていないのに身体中がボコボコ。心肺機能も低下しているので、薬や呼吸器ですでに「生かされている」状態だ。泣かないつもりだったが、先生の隣で目を真っ赤にしている母の顔を見ると涙が止まらなくなった。
先生たちが退室してからも、家族で私の病状について詳しく話すことはしなかった。みんな個々に現実を受け入れる時間が必要だろう。退院予定は月曜日。それまでに在宅医療の準備を整える必要がある。母と妹が帰り、午後はずっと信が手を握ってくれていた。どんなに優しい言葉をかけられても、今日は「ごめんね」しか出てこない。

Ayaka Morohoshi諸星 文香
1980年10月14日東京都生まれ。フリーランス。カナダの大学を卒業後、不動産開発会社や旅行会社の勤務を経て、2011年より世界の素敵なホテルを厳選した宿泊予約サイト「Tablet Hotels」に従事。現在は都内でパートナーと2人暮らし。
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