

母と裕子さんは一足早く、八ヶ岳の別荘に向かった。私たちは母が前日マンション近くの駐車場に停めていった車で11時出発の予定だ。夜4人で食事をするため、まずはキッシュを焼いた。朝は痛みもなく、比較的動きやすい。途中で信が起きてきた。少々疲れ気味な様子。毎晩、私が2〜3時間おきに起きて咳をするたびに飛び起きて「大丈夫?」声をかけ、背中をさすってくれる。
キッシュが焼き上がり、シャワーの時間がきた。嫌で嫌でたまらない。信が一緒に入ろうと提案してくれたので、甘えることにした。予想通り、昨日にも増して大量の髪が抜けた。いっそのこと、全部いっぺんに抜けてくれたらいいのに。部屋中に散らばった髪を掃除するのも一苦労だ。
車に荷物を積み込み、いざ出発。郵便局やスーパーに寄り、中央道で小淵沢へ向かう。山梨に入ると、美しい紅葉の景色に目を奪われる。インターを降りて別荘地の奥へ進むと、母と裕子さんが出迎えてくれた。治療のない週は自然の中で過ごしたい、という私の願いを叶えてくれて、心から感謝している。私が快適に過ごせるよう、ベッドをリビングに移動し、暖炉やヒーターを調整してくれた。
さっそくテラスに出て、那須のSHOZOで買って来たコーヒーと栗のパウンドケーキでお茶タイム。静かで、空気が美味しい。その後、夕食の仕込みをした。豚肩ロースを大きめに切り、ローズマリー、塩胡椒、にんにく、オリーブオイルでマリネ。母と裕子さんが温泉へ出かけている間に、信が香味野菜を刻み、ブイヨンを作る。豚肉を軽く焼き付けて、ストウブに入れ、白ワインとブイヨンでことこと煮込む。一旦火を消して冷まし、食べる直前に白インゲン豆を入れて温めるのがポイントだ。
2人が温泉から戻り、ディナータイム。キッシュとサラダ、メインのスープ、どれも好評でうれしい。母は久しぶりのワインにテンションが上がっていた。普段は私のことが心配で、いつでも運転できるよう大好きなお酒を控えている。

Ayaka Morohoshi諸星 文香
1980年10月14日東京都生まれ。フリーランス。カナダの大学を卒業後、不動産開発会社や旅行会社の勤務を経て、2011年より世界の素敵なホテルを厳選した宿泊予約サイト「Tablet Hotels」に従事。現在は都内でパートナーと2人暮らし。
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