
目が覚めると、横に信の寝顔があった。こんな穏やかな朝があと何日続くだろうと考えただけで、涙がこぼれてしまう。今朝はちょっと嫌な頭痛がする。
ローランにメールをした。自分のこと、仕事のこと、オフィスのこと。彼のような尊敬できる上司の下で、7年半も働くことができて幸せだった。
鎮痛剤を服用するも、風邪のような怠さが続いている。信は、母のために近所に月極駐車場を探したり、買い物や通院がしやすいよう、タイムズのカーシェアを申し込んだりと忙しい。確定申告のことが気になって、20年来の友達であり税理士の為永くんに相談する。驚いていたが、冷静に、そんなことを考えるのは一番最後でいい、と言われた。他にも知らせるべき友人がいるが、エネルギーの消耗が激しく、1度に複数は無理だ。
午後、さっそくカーシェアを利用して出かけた。まずは、自由が丘のレンタルドレス店。抗がん剤治療がはじまる前に、ウェディングドレスの写真を撮って、母にプレゼントしようと思ったのだ。昨日、突然ながら、以前仕事でお世話になったフォトグラファーの今林さんに相談したところ、快く引き受けてくれた。さらに、ドレス以外の費用はすべて持ってくれるという。何年も連絡をしていなかったのに・・。情け深く心の広い人だ。自由が丘の店に好みのドレスはなく、結局ドレスも今林さん紹介のサロンへ後日見に行くことになった。
続いて、学芸大学のFOOD & COMPANYで食材の調達。オフィスメイトの中野さんがブランディングを手がけた、オーガニック食材店だ。信の慣れない東京での運転は心臓に悪い。帰る頃には体の怠さが増し、熱も出てきた。私のリクエストで鶏鍋を作ってくれたが、ほとんど食べられず、鎮痛剤を飲んで寝る。夜、あみちゃんが美容師さんを連れて来てくれる予定だったが、しんどいのでキャンセルした。申し訳ない。著しく悪化する病状に、不安が募る。

Ayaka Morohoshi諸星 文香
1980年10月14日東京都生まれ。フリーランス。カナダの大学を卒業後、不動産開発会社や旅行会社の勤務を経て、2011年より世界の素敵なホテルを厳選した宿泊予約サイト「Tablet Hotels」に従事。現在は都内でパートナーと2人暮らし。
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