

術後1日目。本当に辛い、痛い1日だった。
朝5時に麻薬性のある強い鎮痛剤を筋肉注射したため、意識が朦朧としている。1分おきくらいに寝落ちして、短い夢(幻覚?)をみる。昨日からもう100回くらい繰り返しているのではないか。先生や看護師がくるたびに痛みを訴えた。自分の体を数ミリ動かしただけで、切った胸骨や傷口に激痛が走る。なのに、もうリハビリ開始で、私を立たせて歩かせるらしい。看護師さんに手を借りて起き上がるのがやっと。足の感覚も鈍い。ゆっくり5メートルほど歩いたところでふらつき、ベッドに引き返す。術後の痛みを甘く見ていた。
午後になって信がきた。妹もきた。母は到着早々「お腹すいた、ヒルトップ行こう」と妹を誘ってランチへ出かけた。
改めて梶本先生に手術の結果を聞く。腫瘍は大きく冠動脈に張り付いており、全部は取りきれなかった。今は不安や悲しみより痛みが勝って、涙も出ない。夕方ICUの個室に移動することができた。広々した角部屋。母と妹とが帰ったあと、信と2人になり、ふと思い立った。もし急に意識がなくなって、話せなくなっても後悔しないよう、自分の気持ちを伝えておこう。
「今、わたしに何か起きたとして、信と出会ってなかったら、なんて不幸な人生だって思うかもしれないけど、信と出会ったから、幸せな人生だったって言える。」
嗚咽。はじめて信が泣いているのをみた。

Ayaka Morohoshi諸星 文香
1980年10月14日東京都生まれ。フリーランス。カナダの大学を卒業後、不動産開発会社や旅行会社の勤務を経て、2011年より世界の素敵なホテルを厳選した宿泊予約サイト「Tablet Hotels」に従事。現在は都内でパートナーと2人暮らし。
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