
昨晩は2度も怖い夢に起こされた。息が苦しく、酸素量を上げてもらうと、朝5時まで熟睡できて、めずらしく寝起きの不快感もない。2人を起こさないようにと、2時間ほど暇を潰してベッドに戻る。信に寄り添って寝るのは何日ぶりだろう。私より確実に1度は高い体温は、湯たんぽ代わりだ。
今日は大事な予定がある。前回、熱でキャンセルしてしまったウェディングドレスの試着。体調が悪くならないことを祈るばかり。10時過ぎに酸素を付け替え、母の運転で銀座へ向かう。今林さんから紹介されたのは「グランマニエ銀座」というレンタルドレス店。胸にある傷が隠れるよう、ホルダーネックのドレスを予めリクエストしておいた。
酸素を外し、ドレスを試着している間、病気のことを忘れられた。ドレープカーテンを開け、母と信に対面したとき、涙が溢れた。結婚しなくてもいいからウェディングドレスが見たい、と言っていた母。病気を知ってから尚、私と結婚しようと決意した信。2人が喜ぶ姿を見るのは、幸せと悲しみが混ざり合う、複雑な気持ちだった。信の黒のタキシード姿もキマっていた。金曜日の撮影は、2回目の抗がん剤治療の後。体調次第でまた延期の可能性もある。2人並んでiPhoneで撮った写真は、すでに私の宝物だ。
契約を終えて「天龍」でランチ。大好きな餃子を頬張った。帰宅してまもなく、在宅診療の医師と看護師たちの訪問。薬の細かな説明や、契約について2時間弱。長かった。夕方、Tabletの同僚から送られてきた小包を開ける。すると中には、まるでクリスマスのような数のプレゼントと手紙。病気のことは、社長のローランと他数人にしか話していなかったにも関わらず、たくさんの同僚がメッセージをくれたカードを見て、嬉し涙が止まらない。すぐに写真を撮り、御礼のメールを打った。
夜は、私のリクエストで湯豆腐。熱々の鍋を囲みながら、今日のドレス写真を何度も見ては、笑って、褒めて、そして泣いた。

Ayaka Morohoshi諸星 文香
1980年10月14日東京都生まれ。フリーランス。カナダの大学を卒業後、不動産開発会社や旅行会社の勤務を経て、2011年より世界の素敵なホテルを厳選した宿泊予約サイト「Tablet Hotels」に従事。現在は都内でパートナーと2人暮らし。
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