
今朝はメニューにスペイン風オムレツの表記。嫌な予感がするが、どんなものが入っているか、蓋を開けるのが楽しみ。結局、柔らかく茹でたジャガイモが入った卵焼きだった。2人で爆笑。笑うと傷口が痛む。早く大笑いできるようになりたい。
午後、腫瘍内科の先生が来た。まだ病理の結果が出ていないので、何とも言えないが、私の心臓にできた腫瘍は肉腫と呼ばれるもので、肺への転移も見られるため、癌のステージで言うと4らしい。ゲノム検査の説明を聞き、最後に大丈夫?と聞かれたが、首を縦にふることは到底できなかった。先生が部屋を出ると泣き崩れた。
今日は母が泊まることになり、信と行き違いで正子さんが面会に来る。申し訳ない。きっと息子を心配しているのだろう。サラダと焼肉弁当を2つも買ってきた。その弁当の肉だけを私がぺろりと平らげたところに梶本先生がやってきて、術後3日で肉を食べられる人はあまりいないと言われた。今日も服装がキマっていた。
食後は特に咳き込むのが怖い。極小さい食べかすや埃が器官の入り口に触れ、咳をすると胸の傷口がものすごく痛む。力がないので咳がとまらず、何度も痛みを堪えることになる。その様子を見た正子さんは驚いたのか、会話の途中で帰ってしまった。
母と一緒だと、また違う安心感がある。全身全霊で娘をサポートし、いつもポジティブに、私の弱気な発言も強気な発言も受け止めてくれる母は、やはり頼れる存在だ。マッサージの腕もプロ級で、手や足を絶妙なタッチで揉んでくれる。
その夜、ちょっとした心境の変化が訪れた。いつ何が起こるかわからない。やりたいことをできることからはじめよう。頭痛がはじまってから今日に至るまでの出来事や、思いを記録しておきたい。自分が生きた証として、そして誰かのガンの早期発見に役立つように。

Ayaka Morohoshi諸星 文香
1980年10月14日東京都生まれ。フリーランス。カナダの大学を卒業後、不動産開発会社や旅行会社の勤務を経て、2011年より世界の素敵なホテルを厳選した宿泊予約サイト「Tablet Hotels」に従事。現在は都内でパートナーと2人暮らし。
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