

今朝も昨日と変わらず体調がいい。酸素の量は以前の半分で、長時間外していても息苦しくない。
今日は待ちに待った那須への小旅行だ。アートビオトープに2泊して、ゆっくり自然の中で過ごしたい。もちろん、ボタニカルガーデン「水庭」も目的のひとつだ。抗がん剤治療がはじまる前に企画していたが、高熱で入院し中止となった。
朝から片付けや荷造りなど、信が仕事をしている間も動ける範囲で手伝う。信がレンタカーをピックアップして、マンション前で酸素吸入器やその他の荷物を積み込んで出発。空は雲ひとつない快晴。首都高速の渋滞を抜け、東北道を順調に走る。だんだんと山の景色が近づき、紅葉が鮮やかになっていく。久しぶりだ。この2ヶ月、3度の入退院で自然と触れる機会がほとんどなかった。
午後3時、無事アートビオトープに到着。部屋に荷物を運び終えると、信が「今の時間の光がいいよ」とさっそく水庭へ。想像以上に美しく壮大。自然の中に造り出された不自然さ。石畳に沿ってゆっくりと歩いて行く。沈みかけた太陽に照らされた木々が、枯葉混じりの水面に映り込み、幻想的な世界が広がる。ちょうど中央辺りで立ち止まり、2人きりで結婚を誓った。
1ヶ月前、信に入籍しようと言われ、考えた私の答えだ。入籍はしないけど、もし那須に来ることができたら、水庭で結婚を誓いたい。そんなわがままを叶えてくれた信に対し、涙ながらに出てきた言葉はやっぱり「病気になってごめんなさい」だった。すると信は「代わってあげられなくてごめん」と言い、暫くその場で抱き合った。気持ちが落ち着いたところでまた歩き出し、続きは明日の朝の光にしようと部屋に戻った。
那須はもう東京の真冬に近い寒さだ。仕事でもお世話になっている二期リゾートの美優さんから差し入れで、オリジナルのハーブティーをいただく。夜は併設のカフェでセットメニュー。椎茸とセロリのスープや鶏肉のトマト煮込みが、冷えた体を温めてくれた。シモンズのベッドは気持ちの良い張り感で、ベッドシーツもつるっと肌触りがいい。髪が抜けても散らばらないように、はじめて帽子を被って寝た。

Ayaka Morohoshi諸星 文香
1980年10月14日東京都生まれ。フリーランス。カナダの大学を卒業後、不動産開発会社や旅行会社の勤務を経て、2011年より世界の素敵なホテルを厳選した宿泊予約サイト「Tablet Hotels」に従事。現在は都内でパートナーと2人暮らし。
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